この対談について
今回取り上げるのは、梁瀬さん(@ydbqm)が主催する国内トッププレイヤーによる招待制大会「S級リーグ」。
今回はDay1最終戦で優勝を飾ったAlutemuさんご本人を交え、その試合の牌譜を振り返っていきます。
フル動画はこちらから
(https://www.twitch.tv/videos/2806361551?t=02h26m59s)
S級リーグ最終戦を振り返る

▲S級リーグDay1 最終試合を優勝した瞬間

今日は、S級リーグ Day1の最終試合で優勝したAlutemuさんの牌譜を、ご本人を交えて検討していきます。
僕は研究員目線で素朴な質問を投げていくので、StuntDrakeさんには質問の意図を補足してもらったり、高レートプレイヤーならではのご質問をしてもらえればと思っています。

了解です。

よろしくお願いします。
異常環境では、まず「異常がゲーム全体どんな影響があるか」を見る

では最初に、異常が「ダブルヘッダー」だったところから聞きたいです。

これはかなり長く残っている異常ですね。
初期からあったかは少し曖昧ですけど、かなり長く残っている異常だと思います。

▲ヒーロー選択画面

今回、ヒーローピックではホガー船長を選ばれています。なぜこのヒーローだったのでしょうか。

異常環境では、異常に合わせてヒーローピックすることが大事です。
まず異常が出たときに、その異常がゲーム全体へどう影響するのかを考えます。
序盤にどう影響するのか、中盤以降にどう影響するのか、終盤の構成完成度を加速させるのか。
特に序盤については、コインカーブにどう影響するのかを見るのが大事です。

今回のダブルヘッダーは、「毎ターン最初に購入したミニオンのコピーがもらえる」異常です。
つまり、1枚目に買うミニオンは強いほうがいい。
一方で2購入目以降はコピーが発生しないので、1つ目の購入の価値が高い異常です。
そうなると、1枚だけ買って、あとは早めにグレードを上げる動きが強くなります。
グレードを早めに上げれば、次のターンに買うミニオンの質が上がって、異常をより活かせるからです。
だから序盤のコインカーブとしては、「1体購入しながらグレードを上げる」形を取りたい。

なるほど。異常の効果だけを見るのではなく、「その異常だと、どんなコインカーブが強くなるか」を見るわけですね。

そうです。例えばエリーズのようなヒーローだと、ヒーローパワーを6コイン目や7コイン目あたりで早めに押したい。
でもダブルヘッダーでは、毎ターン1購入したいので、そこが少し噛み合わない部分があります。

もちろんエリーズにも終盤の強い動きはあります。
例えば強いミニオンをヒーローパワーで増やすような動きですね。
ただ、今回はまず序盤にフォーカスしたかった。
ホガー船長は、ヒーローパワーで1ゴールドを得られるので、6コイン目に購入しながらグレードを上げる動きがしやすい。
そこが選んだ理由です。

S級リーグの別の試合でも、ホガー船長が選ばれていました。
そちらは最初のミニオンを無料で買える異常だったので、たぶん同じような考え方なんだろうなと思っていました。

そうですね。
1、2ターン目は「2ターンセット」で考える

▲1ターン目の酒場

最初の1ターン目、2ターン目からすごく面白い動きだなと思いました。

ここは、かなり悩む場面ですね。
酒場に「こんがりボア」と「大道芸人」が見えています。
大道芸人を取ると、次のターンにグレードを上げながら2コスト呪文を使うような動きができるので、かなり強い。
他のヒーローなら基本的には、ほぼ確実にそちらを選ぶと思います。

ただ今回のヒーローは、ヒーローパワーでゴールドを得られる。
なので次のターンに、こんがりボアを売りつつ、大道芸人を買ってグレードを上げる動きが一応できます。
そのとき、こんがりボアで大道芸人を強化して、大きい状態でコピーする。
ダブルヘッダーでよくある「血の宝石やバナナのようなバフを酒場のミニオンに入れてからコピーする」動きです。

つまり、1ターン目だけではなく、2ターン目まで含めてルートを比較していたんですね。

そうです。
この異常に限らず、2ターンセットで考えるのはよくあります。
この時点で分岐としては、1ターン目に大道芸人を買って、2ターン目にグレード上げと呪文を絡めるルート。
もう1つは、1ターン目にこんがりボアを買って、次のターンにこんがりボアを売り、大道芸人を買ってグレードを上げるルートです。
【ルート案①】
【ルート案②】※今回採用
▲ 2体の大道芸人のスタッツは7/5

どちらが後々いいか、ボードが強いかを比較します。
できれば、その先の戦闘結果まで踏まえたいですね。
例えば、こんがりボアルートなら1ターン目は引き分けで、2ターン目は勝てる。
つまりライフ損失を0点で抑えられる。
一方、大道芸人から入ると、この盤面では4点受ける可能性がある。そういう比較です。

ライフの差も見るんですね。

見ます。
ただ、お金の面では大道芸人から入るルートのほうが優れている部分もあります。
ミニオン4体で迎えられるので。
ここで最終的にこんがりボア側に行った決め手は、大きい大道芸人を2体にしておけることです。
スタッツを1か所に集中させられるので、後でボードの枠が厳しくなってきたときにも都合がいい。

ただ、ここはかなり難しいです。
厳密にどちらがいいかをその場で示すのは難しい場面ですね。
「出すか、出さないか」も次ターンのルートで決まる

前のターンで凍結しておいた大道芸人に血の宝石を使い、強化された大道芸人をコピーする様子

ターン2で強化した大道芸人を購入しますが、出すか出さないかの判断も聞きたいです。

結果的には出します。
ただ、出さないことにもメリットがあります。
このターンでは出さずに手札へ残しておき、5コイン目に召喚すると、
6コイン目にグレードを上げながら購入するためのお金にできます。
なので、出さない選択肢もあります。

ただし出さないと、その戦闘ではライフを失います。
そこも考慮する必要があります。
この場面では両方出しました。
理由は、次のターンの酒場に斥候や大道芸人が来たとき、両方出しておくことで、グレードを上げながらそれらを増やせるからです。

具体的には、7コイン目の時に、グレード上げが6コイン。
そこで酒場の大道芸人を拾って、ノーマルの大道芸人を出して売って、グレードを上げ、コピーされた大道芸人を出す、という動きができます。
そのルートを具体的に考えたうえで出しました。ライフも守れますしね。

▲5コイン目のターン、予想通り斥候が酒場に現れる

実際に斥候が来ましたね。

ここで斥候が見えて、「斥候を買う、売る、グレードを上げる」というルートはかなりきれいです。
ただ、石油を5コインのタイミングでダブルヘッダーで増やす動きもかなり強い。
長期的に見て強い選択肢を取った感じですね。

石油を増やした後、グレ上げではなく斥候を取るんですね。

そうです。
ここでミニオンを売って無理にグレードを上げるのは、ちょっとできないですね。
序盤に3ゴールド払って買ったミニオン、特に少し大きくなったミニオンを売るのはなるべく避けたい。
売ると2ゴールド分くらい浪費していると考えてもいいです。
ここで斥候を買うのは、後々のゴールドを動きやすくするためです。
ただ、斥候を買う前に将来への投資となる石油を先に購入しコピーします。
中盤: 構成を決め切らず、広く見ながら強い動きを取る

▲6コイン、更に斥候が酒場に現れて重ねるチャンス

次、6コイン目のターンでは更に斥候が酒場に出て重ねることが出来ました。

▲斥候のトリプル報酬から4グレ発見する様子

4発見の場面では、リソース供給系や二刀流のようなカードが来たら狙っていたのでしょうか。

そうですね。
ただ、この場面で取ったヒューモンゴスは、基本的には消去法です。
一番ボードが強かったので。
ただ、ヒューモンゴスにも偉いところはあります。
血の宝石の雨構成で、バフを大きくできる。
1/2バフでも、この構成ではけっこう大きいです。

もう少し踏み込むと、ダブルヘッダーと血の宝石の雨構成は相性がいいです。
最終的には酒場で大きくなったミニオンに宝石を集めて、それを買って、また別のミニオンに移す、という動きをしていく。
ダブルヘッダーなら、バフが乗った酒場のミニオンをコピーできます。
とはいえ、この場面では完全に消去法ですね。比較対象がそこまで強くなかったので。

▲7コイン目、宵越しをコピーする様子

次のターンでは、宵越しをコピーしています。

ここは、まだ決め切らず、広く見られるようにしたかったです。
次にグレードを上げることも考えています。
下級装飾品の選択

▲下級装飾品の発見

8コイン目では装飾品が出てきて、割と早めに決断した場面ですね。

そうですね。ここでタイプライターが見えています。
ダブルヘッダーと合わせるとかなり強いですし、今グレードを上げられる状況なのも噛み合っています。
タイプライターは、当然より強いミニオンをコピーできたほうがいい。
直前に宵越しを取っていたことが活きる形になりました。
▲上記は上級装飾品のタイプライター

ただ、この時点で完全に構成を決め切っているわけではありません。
グレード5の強いミニオン、特にリソース系のミニオンを広く見たい。
装飾品の強さは、単体の効果だけでは決まりません。
選ぶ瞬間の酒場、手札、次にグレードを上げられるか、コピーできる対象があるかで大きく変わります。

タイプライターは、強いミニオンをコピーできるほど価値が上がります。
直前に宵越しを取っていて、さらにグレードを上げられる状況だったからこそ、グレード5の強いミニオンを広く見る方針と噛み合っています。
装飾品を選ぶ時は、「この効果は強いか」だけでなく、「今この盤面で、次の2ターンにどれだけ強く使えるか」を見るのが重要です。

▲先日のアップデートで復活したアップビートなデュオが酒場に現れる

更にリロールを回していくと、デュオが見えます。

デュオはめちゃくちゃ強いミニオンなので取ります。
しかも2枚で取れると、次のターンにデュオでデュオを増やして重ねることもできる。
次のターンのダブルヘッダーとタイプライターを合わせる選択肢もありましたが、
デュオは今すぐ置くことで次のターンに発動します。
なので早めに置いていきます。

ここで構成はまだ決まっていないけれど、大きく見ている状況ですか。

そうです。まだ構成は決め切っていません。
次のターンにデュオが発動するので、そこで一気に方向性を固めたい。
ただ、この時点でかなり有利に進んでいます。
既にグレード5でこれだけのボードを作れている人は少なかったと思うので、差をつけられている状況ですね。
リロールしすぎず、最低限強い動きを確保する

ここでは本当はブランや、海賊の軸になるカードを増やしたかったんですよね。

そうですね。
理想はブランや構成の軸になるカードを増やして、デュオでゴールデンにすることでした。
ただ、この時点でかなりうまくいっていて、余裕がある状況だと思っていました。
ここでリロールしてブランや軸カードを引ければ、当然かなり価値があります。

でも、リロールし続けて本当に何も見えない事故もあり得ます。
最低限の強い動きをしておこう、というイメージです。
また、斥候売りで手に入るミニオンがグレ5で妥協しておいても、十分成り立つ。
振り返ると少し弱気すぎる気もしますが、それだけ状況が良かったという判断ですね。

最低限強い動きで、次の構成にもつながる。

そうですね。
6発見: エヴォーカーではなく、リソースを優先

▲デュオのトリプル報酬でグレ6発見する様子

デュオが重なり6発見です。
ロジャースを取っていますが、エヴォーカーは選択肢にならなかったですか?

エヴォーカーを取るなら、もう少しリソース系のカードが欲しいです。
この時点で、バフシステムはドラストが一応あります。
エヴォーカーもバフシステムになるので、それより先にリソースを確保したい。
だからロジャースを取りました。

例えば盤面に資源供給の軸になるカードがあれば、リソース供給とエヴォーカーを組み合わせる形もありました。
ただ、この場面ではエヴォーカーをうまく活用するためのリソース供給がまだない。
あとは、ダブルヘッダーの異常では中途半端なテンポを取っても勝ちにくい。
より強い動きが見込めるロジャースにしました。

ここからは、負けないボードを作りながらカードを探すターンですね。

そうですね。このターンは手札を使い切って、とりあえず全力を出すイメージです。
上級装飾品の選択と、背中合わせ構成への移行

▲上級装飾品発見直前のシーン

装飾品の場面で、酒場がかなり良く見えました。

そうなんですよね。
この酒場込みで装飾品を選ぶことになります。
ドラストを2枚持っていて、ペアもある状況。
この状況なら狙えそうだな、というのがありました。
あと、リーグ戦として見てもポイント状況的に1位を狙いたい状態でした。
なので、タイプライターの方を取って、背中合わせ構成を狙う方向にしました。

同ターン内、すぐにバリンダが酒場に現れる

ここでグレードを上げて、バリンダを引きます。

これはだいぶラッキーですね。
デュオで増やせるターンに間に合ってくれた。
バリンダが見えた時点で、背中合わせ構成の方に向かっていい。
ドラストはここで役目を終えたような感じなので、小さい方を売っていきます。

ここで構成が発展した、という感じですね。

そうですね。
すごいターンでした。バリンダを引けたのがかなり偉いです。
あとは、バフ先になるミニオン、スペルバフ、ドラッカリが来れば完璧です。
酒場に見えた死の海の荒らし屋はバフ先としてかなり強いので取っていきます。
▲背中合わせ構成の鉄板ミニオン
ドラッカリを引くまでの危ない時間を、ライフで耐える

ここからはドラッカリを引ければ安心、という場面ですね。

そうです。このターンのうちにドラッカリを引ければ、かなり安心できます。
構成としてコピーしたいカードはもうほとんどありません。とにかくドラッカリを引くことが大事です。

ドラッカリが酒場に現れ、構成完成

恵みAPMを回していくとドラッカリが見えました。
※APM(Actions Per Minute): 1分間に行える操作回数のこと。バトグラでは、制限時間内に大量の売買やプレイを行う、操作量の多い構成を指す。

ここは手札をきちんと整理するのが大事です。
残りゴールドはそこまで気にしなくてもいいくらいですが、実際にはかなり残していましたね。

この構成は強くなるまでに時間がかかりますよね。
強くなったら他に敵がいないくらい強いんですけど、そこまでの弱い時間をどう逃げるかが大事ですよね。

そうですね。
序盤をうまくく進められて、ライフを残していたことが今ここで効いています。
完成後は、残りの強化先を見極める

スペルバフのミニオンも見つかり、背中合わせの最終構成が完成

ここまで来ると、もうかなり安心ですか?

ドラッカリも引けたので、ほぼ安心です。
あとは最後に何かしらスペルバフを引きたい。
そこまでできれば勝ち確に近い構成です。
今回で言うと、金ドラッカリ、金バリンダ、金終焉の先遣者、終焉の先遣者 までそろっていて、構成のクオリティはかなり高い。
あとは強化できる部分がスペルバフくらいです。
だから植物学者のようなカードも選択肢になります。
バフ量換算すると、かなり伸びているはずです。


▲死の海の荒らし屋(左から3番目)にバフを集中させ、A472→A3352まで育てる様子

少しだけバフを散らしてもよかったかもしれません。
保険として、バリンダ側にも少し入れて、毒系のケアをするような考え方ですね。

ここからは、戦闘で強いバフ先を増やしたい。

そうですね。刀狩のようなアタッカー系を探していると思います。
ドラゴン構成への対抗は力押し

▲Barrette選手のエヴォーカー+恵み構成に一度敗北

相手のドラゴン、エヴォーカー構成はかなり強そうに見えます。
チャームウィングが育っている相手には、どう対抗するのでしょうか。

あのタイミングで一度当たっているので、次に当たるならかなり後になると分かっています。
それなら、その時間があれば、テックカードで対応するというより、力押しで勝てると考えています。
実際、問題なく勝てると思います。
こちらが強すぎるので、そこはあまり気にしなくていい。
最終戦: 強すぎるからこそ、スタッツを分散する

▲最終決勝戦の様子

最後は先ほどのBarrette選手のエヴォーカー+恵み構成で、チャームウィングもかなり育っている形でした。

中途半端なサイズでは意味がないので、普通なら刀狩にがっつり集めたり、死の海の荒らし屋にある程度固めたりする選択肢があります。
ただ今回は、背中合わせ構成のクオリティがかなり高かった。
一発入れたら中途半端どころではないスタッツにできていたので、毒などのケアも含めて、最大限リスクを排除するために分散させました。

もう少し構成の質が低ければ、刀狩に集めて、チャームウィングの上から取れるように調整するべきだったと思います。
今回は強すぎたから、がっつり分散させた感じですね。


見事1位です。
Alutemu選手の総括: 最終形は100点、道中はライフを残せたことが効いた

Alutemuさん的に、この背中合わせ構成構成は100点満点でしたか?

最終的な完成度は、完全に100点満点ですね。
道中に関しては、上級装飾品のターンにいきなり金終焉の先遣者、背中合わせ構成の方向が見えたので、そこから向かうのも悪くないかなと。
若干リスクはありましたけど、ライフがあったので、そのリスクを取れました。
たまに、引きが強すぎてノーリスクで組めることもあるんですけど、今回はそうではない。
序盤にライフを残せたことが功を奏した、という感じでした。

ありがとうございました。
振り返ってみるとかなり話すことが多い試合でしたね。

そうですね。

では最後に、次のS級リーグに向けて一言お願いします。

最初の第1週のスタートは少し出遅れる形になって、今7位タイくらいだと思います。
ただ、今回振り返った試合で1位を取れて、ギリギリ望みをつなげた状態です。
まだまだ全然諦めずに、2連覇を目指して頑張っていきたいと思います。

ぜひ応援しています。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

ありがとうございました。

































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